トップページ > 診療内容 > 前立腺がん
1.前立腺がん Q&A
前立腺がんってあまり聞かないけど、日本人には少ないんじゃありませんか?
前立腺がんってずいぶん増えているんですね。私は52歳ですが、そろそろ心配しなければいけない年齢なんでしょうか?
最近トイレが近くなってる気がして、前立腺肥大症を心配しています。肥大した前立腺が「がん」になる可能性はあるんですか?症状の違いはどうなんでしょう。
検査はあんまり好きじゃないんですよ。前立腺がんの検査って大変なんですか?
前立腺がんと言われました。前立腺がんの進行スピードって早いんですか?
どうすれば、前立腺がんは治るんでしょう。やっぱり手術ですか?
内分泌療法について詳しく知りたいのですが、ホルモン剤と何か関係あるんですか?
前立腺がんにはなりたくないなぁ。何とか予防することはできないんですか?
2.50歳を過ぎたらご用心
心身ともに健やかな毎日を送るには、病気に対する正しい知識が大切です。 これからの日本人にとって、増加の傾向がみられる前立腺がんはちょっと気になる病気です。 知識を広げて、不安や疑問を解消しましょう! 監修:大阪府立成人病センター 宇佐美 道之先生
前立腺がんはもともと欧米に多く、アメリカでは男性で最も多い「がん」です。 日本では欧米の1/10〜1/20といわれ、発生率の低いがんと考えられていました。 しかしここ最近日本でも、前立腺がんが急増しているんです。 その原因としては、食事など生活習慣の欧米化や検診の普及、社会の高齢化などが考えられます。 高脂肪食などの生活習慣の欧米化、検診の普及や診断技術の向上、社会の高齢化などに伴って急増している前立腺がんは、21世紀には男性の国民的がんとなることが予想されます。
前立腺は、男性だけがもっている臓器です。前立腺がんは、老化により性ホルモンのバランスがくずれたり、環境や食生活など種々の要因が加わって発生する病気といわれています。 したがって、50歳代ごろから現れはじめ、発生の平均年齢は70歳くらいといわれる男性高齢者のがんです。 『前立腺がんとは・・・』 「高齢者のがんです。」 前立腺がんにかかる人数は、一年間で10万人中10人程度です。これを年齢別にみると、10歳代で約1人、60歳代で約10人(1万人に1人)、70歳代では100人(1000人に1人)、80歳以上では200人(500人に1人)となります。(1988年調べ) 「前立腺の腺細胞ががん化したものです。」 前立腺の発育や働きは、精巣で作られる男性ホルモンに強く影響されます。老化すると、男性ホルモンや女性ホルモンなどの微妙な作用で前立腺の腺細胞が無秩序に自己増殖して、がんが発生します。 「食生活などの要因も深く関わって発症すると考えられます。」 前立腺がんは、50歳代から急速に増え始める高齢者のがんです。前立腺がんは、加齢に伴う微妙なホルモン作用などで発生するとされています。食生活なども密接に関係しています。
前立腺がんと前立腺肥大症はその主な発生場所が異なっていますし、性質も異なる別の疾患です。肥大症は良性の病変で、がんになるわけではありません。 でも、症状は頻尿、排尿困難、残尿感など両者ともよく似ています。ただし前立腺がんは、初期にはほとんど自覚症状がないので注意が必要です。
「正常」
前立腺は男性の膀胱の出口、尿道の始まりの部分を取り囲んでいるクルミ大の臓器で、精液の一部を作っています。直腸とも接しており、肛門から指で触診(直腸指診)することもできます。構造はちょうどみかんに似ていて、皮の部分を外腺、実の部分を内腺といいます。
「前立腺肥大」
前立腺肥大症はみかんの実の部分、内腺が大きくなって尿道を圧迫し、尿の出が悪くなった状態です。
「前立腺がん」
前立腺がんは皮の部分、外腺が夏みかんのように分厚く凸凹になった状態です。
『がんと肥大症のちがい』
『前立腺がんの症状』 前立腺がんは直腸指診でははっきり腫瘍がわかる段階でも、ほとんど自覚症状がないことがあります。病巣が大きくなって、尿道や膀胱を圧迫するようになると排尿障害がみられます。また転移による痛みがでて初めて前立腺がんを診断されることもあります。 前立腺がんや前立腺肥大症でみられる排尿障害とは・・・? ・尿の回数が増える(特に夜中) ・排尿の後すぐまたトイレに行きたくなる ・尿がでにくく、下腹部に不快感がある 前立腺がんが進行すると・・・ ・血尿、尿失禁やむくみ ・背骨や骨盤への転移による腰痛や歩行困難など 前立腺がんと前立腺肥大症は異なる疾患ですが、症状はよく似ているので注意しましょう。 50歳をすぎて排尿に異常を感じたら、すぐに医師の診察と検査を受けることが大切です。
前立腺がんは、比較的簡単な検査で発見できます。問診のあとに行われる主な検査は、直腸指針やPSA(がんになると血液中に増加する前立腺特有の物質)の測定、またもう少し詳しく調べる場合には直腸からの超音波検査などがあります。 それで疑わしい場合に針生検を行います。その結果がんと判明すれば病気の進行具合を調べるために、MRI,骨シンチグラフィーなどを行います。 『検査の流れ』 @スクリーニング ・問診 ・直腸指診 ・前立腺腫瘍マーカー(PSA)の測定 ・経直腸的超音波検査 A確定診断 ・針生検 B病期診断 ・CT ・骨シンチグラフィー ・尿道造影、腎盂造影など 『前立腺がん診断のための主な検査』 問診 排尿障害などの自覚症状をチェックします。 IPSSという世界共通の問診表を用い、排尿状態を点数化して自覚症状の程度を判断する方法もあります。 PSA がんになると血液中の前立腺腫瘍マーカーと呼ばれる物質(前立腺特異抗原:PSA)が増加します。前立腺がんでは90%以上の人が高値を示します。 肥大症の患者でもやや高い値になります。治療経過の観察にも有用な血液検査です。 直腸指診 肛門から直腸の中に指を入れて、前立腺の大きさや形、硬さなどの状態を調べます。 前立腺肥大症は弾力のある硬さですが、進んだがんでは石のような硬いしこりをふれます。 MRI 前立腺のがん病巣の広がりをかなり正確にとらえることができます。 経直腸的超音波検査 肛門より指くらいの太さの超音波発信装置を挿入して異常を調べます。 骨シンチグラフィー 前立腺がんは骨に転移しやすいので、骨の転移部位に集積するアイソトープという薬剤を静脈に注射し、X腺写真で骨を写して調べます。 針生検 前立腺を針で穿刺して組織を採取し、がんの悪性度を調べます。3〜4日の入院が必要になる場合もあります。 その他の検査 尿の通り道におよぼす影響を調べるために、尿道や血管から造影剤を注入しX腺で撮影する尿道造影や腎盂造影なども行います。 前立腺がんの検査は、問診、直腸指針、PSAなどの比較的簡単な検査で発見されます。 自覚症状がなくなっても、50歳になったら怖がらずに一度検診を受けてみてください。
前立腺がんは一般的には発がんしてから臨床的ながんになるまで、40年近くかかるといわれるほど成長速度が遅いがんです。前立腺がんは病気の進行程度によりA、B、C、Dの4つの病期に分類されますが、初期の段階には自覚症状がありません。 骨の痛みなどで初めて気がつく場合も多く、残念ながら診断がついた時にはすでに進展がんや転移がんとなっている人が7〜8割にのぼっていました。ただし、検査の進歩でこういった進行したがんは減ってきています。
『がんの病期』
<病期A>
[偶発がん]前立腺肥大症などの手術で発見されたがん
<病期B>
[早期がん]前立腺の内部にとどまっている段階のがん
<病期C>
[進展がん]前立腺の被膜を越えて広がった段階のがん
<病期D>
[転移がん]リンパ節や骨、肝、肺などに転移した段階のがん
『がんの悪性度』 病期の他にも前立腺がんは、悪性度によって3段階に分類されています。「高文化がん」はおとなしいがん、「低文化がん」は激しいがん、「中文化がん」はその中間といえます。これらの病期や悪性度によって治療の進め方がちがってきます。 前立腺がんは病気の進行程度によりA、B、C、Dの4つの病期に分類されます。 一般的に進行速度は遅いがんですが、初期の段階では、自覚症状がないので、自覚症状がでたころには病気が進んでしまっていることもよくあります。
早期がんでは手術をしますが、病期が進んでいる場合は手術はしません。前立腺がんの治療法は内分泌療法、外科療法、放射線療法、化学療法などです。 また、がんの病期と悪性度に合わせて、これらの治療法を組合わせて行うこともあります。 早期がん(病期A、B)では前立腺を摘除する全摘除術が中心ですが、病期が進んでいる場合(病期C、D)は内分泌療法を主に行います。 患者さんによって受ける治療方法はさまざまです。 主治医の先生とよく相談し、がんの病期と悪性度、年齢、今までの病気や一般状態に基づいて治療法方を計画し、納得したうえで、適切な治療を受けましょう。
内分泌療法とは男性ホルモンの働きを抑える治療法で、95%の人はこの治療によく反応します。もともと前立腺がんは、男性ホルモンを断つか、女性ホルモンを投与するか、あるいは男性ホルモンのはたらきを抑える抗男性ホルモンを投与することでがんを抑えます。 内分泌療法にはいくつかありますが、最近は、男性ホルモンを作る過程を抑えるLH-RHアゴニストという薬剤を月に1回注射する治療法が主流になってきています。 最近の内分泌療法は、LH-RHアゴニストという薬剤を月1回注射する治療法が主流で、その治療効果は大変良好です。 決められた治療方法を守って、定期的な診察をきちんと受けましょう。
残念ながら予防の決め手はありませんが、緑黄色野菜を毎日とるように心掛け、肉食を控えたり、度の強いお酒を避けるなど日常生活に気を配ることは大切です。 しかし何といっても、早期発見・早期治療がこの病気の決め手になり、適切な治療を受けることで長期にわたって良好な病後を過ごすこともできます。50歳になったら、年に1回くらい泌尿器科で検診を受けることをお勧めします。 50歳を過ぎたら、前立腺の検診も積極的に受けるように心掛けましょう。 度の強いお酒は避け、飲み過ぎにも注意しましょう。 日常生活では緑黄色野菜を毎日とるように心掛け、肉食を控えましょう。
前立腺がんは比較的進行の遅いがんですから、もしがんの診断を受けても、落ち込んだりする必要はありません。医師とよく話し合い、決めた治療スケジュールを守ってがんをやっつけましょう!